聖書をお読みいたします。
聖書箇所は、創世記8章6節〜22節。
新共同訳旧約聖書10ページ〜11ページです。
8:6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、
8:7 烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。
8:8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。
8:9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。
8:10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。
8:11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。
8:12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
8:13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。
8:14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。
8:15 神はノアに仰せになった。
8:16 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。
8:17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」
8:18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。
8:19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。
8:20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす献げ物として祭壇の上にささげた。
8:21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。
8:22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも/寒さも暑さも、夏も冬も/昼も夜も、やむことはない。」
「虹の約束」と題して、村田悦牧師に、メッセージをしていただきます。
・子どもメッセージ
おはようございます。
今日もまず最初に子どもメッセージからしたいと思いますが、私たちは、3回にわたって、ノアの物語を読んできました。
今日は、その最後の場面になります。
最後の場面にはどんなことが書かれているか。
これまで読んできた話を振り返りながら、もう一度最初から、紙芝居で読んでみたいと思います。
1、「ノアの箱舟」
2、神様がおつくりになった世界に、人間がどんどん増えていきました。
神様は、その世界をご覧になって、言われました。
「どうしてあんなに悪いことばかりするのだろう。
嘘をついたり、泥棒をしたり、互いに喧嘩ばかりしている。」
神様は、とっても悲しい気持ちになりました。
そして、とうとう神様は、この世界を、滅ぼすことに決めました。
でも、そんな世界にも、神様を信じて、従う人がいました。
ノアです。
3、神様はノアに言いました。
「これから私は大雨を降らせ、洪水を起こす。
だから、私の指示に従って、大きな船をつくりなさい。
そうすれば、洪水が起こっても、生きることができる。」
「神様、わかりました!」
その日から、ノアの船づくりが始まりました。
「トントン、カンカン、トントン、カンカン。」
その様子を見て、周りの人たちは、言いました。
「ノアは一体何をしてるんだ。
あんな船をつくって、どうするつもりだ。」
でも、ノアは、神様の言うことを聞きながら、大きな船をつくりました。
4、「さあ、船に乗りなさい。もうすぐ大雨を降らせるから。」
ノアとその家族、そして、動物たちは、船に乗り込みました。
みんなが乗ってしまうと、バターンと音がして、船の戸が閉まりました。
5、すると雨が降り始めました。
次第にその勢いは増し、川の水も溢れ、洪水になりました。
高い山々も水に覆われ、ノアの箱舟だけが浮かんでいました。
雨は、四十日四十夜、休むことなく降り続きました。
6、やがて雨は止み、波も落ち着いてきました。
ノアは窓を開き、鳩を放ちました。
しばらくすると、鳩は、オリーブの葉をくわえてかえってきました。
それは、洪水が終わったしるしでした。
7、神様は言いました。
「箱舟から降りなさい。
私はもう2度と、洪水を起こさない。あなたたちと共にいる。
そのしるしとして、雲の中に虹を置く。」
見上げると、青い空に、きれいな虹がかかっていました。
最後に神様は、「もう2度と洪水なんて起こさない。
わたしはあなたたちと共にいる」そう言って、ノアたちに虹を見せました。
虹は昔、力をあらわすものだって、考えられていました。
みんなも、虹を見たことがあると思いますが、昔の人たちは、虹を見て、弓のようなだって思ったそうです。
英語でも、虹のことを、rain-bowって言いますよね。
rainは雨。bowは弓という言葉です。
つまり虹っていうのは、雨の弓だってことです。
その虹を置くっていうことは、つまり、力を置く、力を捨てるってことだそうです。
神様は、力によって、人間を支配するのをやめられた。
むしろ、力を捨てて、人間と共に生きる道を選ばれたってことです。
大分では、今日からしばらく雨が続くようですが、雨が止んで、晴れた日には、きっと空に虹がかかると思います。
そしたら、ぜひ、「虹は、神様が共にいるしるしだ」って、思い出してほしいと思います。
お祈りします。
・導入
3週にわたって読んできたノアの物語も、いよいよ今日で最後になります。
最後の箇所には、長い箱舟生活の終わりと、神様が与えられた約束が語られています。
・オリーブの葉
ノアの箱舟生活は1年に及びました。
ノアが箱舟に乗ったのは、生涯の第600年、第二の月の17日であったと書かれています。
600歳と2ヶ月と17日目に、箱舟に乗ったということです。
それに対して、箱舟を降りたのが、601歳と2ヶ月と27日目であったと書かれていますから、1年と10日間、箱舟に乗っていたということになります。
この1年と10日間は、ノアにとって、どんな時間だったでしょうか。
「1年と10日経ったら、箱舟から降りられるよ」と、そう言われていたら、まだ耐えられたかもしれませんが、そうではありませんでした。
箱舟生活が、どのくらいになるのか。
いつ箱舟から降りられるのか。
そもそも、箱舟から降りられる日が来るのかどうかもわからないまま、ノアの箱舟生活は始まりました。
これは、とても大変なことです。
マラソン選手だってですね、ゴールがあるからこそ、頑張って走れるわけで、それが知らされずに走るなんて、耐えられないと思います。
終わりの見えない箱舟生活の中で、ノアはどれほど不安を感じ、どれほど疲れを覚えたことでしょう。
あと数日すれば、雨も止むだろう。
もうちょっと頑張れば、洪水もおさまるだろう。
そういう見通しや、期待が、ことごとく裏切られていく。
いつになっても、雨はやめないし、どれだけ耐えても、洪水はおさまらない。
そんな日々の中で、「もう地上には戻れないかもしれない」、心が折れるような瞬間も、きっとあったでしょう。
ノアが箱舟の窓を開けたのは、乗り込んでから約9ヶ月後のことでした。
やっと窓が開けられる。
やっと外が見れる。
期待を持ってノアは窓を開けたと思います。
でも、そこに広がっていたのは、水で覆われた世界でした。
変わり果てた世界を見て、またしてもノアの心は、暗くなったでしょう。
でもノアは諦めず、烏を放ちました。
烏は、乾いた地を見つけられず出たり入ったりしました。
でもノアは諦めず、今度は、鳩を放ちました。
しかし鳩も、止まる所を見出せず、ノアのもとに戻ってきました。
それでもノアは諦めず、七日後、再び鳩を放ちました。
今度も、鳩は戻ってきましたが、そのくちばしにはオリーブの葉がありました。
それは、地上から水がひきはじめていることのしるしでした。
諦めず手を伸ばし続けたからこそ見ることのできた、希望のしるしです。
頑張ればいつか報われる。
諦めなければ、いつか、実を結ぶ。
私たちの人生は、そんな単純なものじゃないかもしれません。
頑張ったって、報われないこともありますし、努力したって、叶わないこともあります。
でも、鳩をとばし続ける。
祈ることをやめず、信じることを捨てず、小さくても、できることを続けていく。
そういう人に、希望のしるしは届けられるのだと、そう言われているように感じます。
・神の転換
ノアにオリーブの葉が届けられてから、さらに3ヶ月後、大地は乾き、ノアたちは箱舟を降りました。
そこで、彼らが最初にしたこと、それは礼拝でした。
祭壇を築き、焼き尽くす献げ物を献げました。
すると神様は言われました。
21節、主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。」
あれ、悪いから滅ぼすんじゃなかったの、そう思われる方もいると思います。その通りです。
創世記6章で、神様は、地上に人の悪が増しているのをご覧になって、人をつくったことを後悔し、滅ぼすことを決めたって、言われていました。
唯一ノアだけは、神に従う無垢な人だった。
だから、箱舟をつくらせ、生き残らせることにしたって、書かれていました。
そんな神様が、洪水を経て、「人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。」と言われるようになった。
人間たちが、変わった。良い人間になった、というわけではありません。
「人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。」
その状態は、洪水を経ても、何も変わらなかった。
確かに洪水は、悪と暴虐に満ちた世界を滅ぼしたけれど、人間の心の悪までは変えられなかったということです。
そんな中、洪水を経て、唯一変わったことがあります。
唯一、変わられたお方がいる。
それは、誰かというと、そう神様です。
神様が変わられた。
悪に洪水をもって報いられた神様が、もう2度とそんなことはしないと誓われた。
・虹の約束
その誓いのしるしとして、神様は、雲の中に虹を置かれたと語られています。
子どもメッセージでは、英語のrain-bowから、虹は弓をあらわすということを話しましたけれども、実は、より古い言葉であるヘブライ語でも、虹には、「ケシェト」弓を意味する言葉が使われています。
弓は、古代オリエント世界における最も一般的な武器だったと言われています。
狩猟にも使われていましたし、争いの時にも、用いられていました。
その虹を置くということはつまり、力を捨てるということを意味しています。
そうすることで、神様は、力によって人間を支配するのではなく、力を捨てて、人間と共に生きることを誓われたわけです。
これは、神様の誓いです。
もう2度とこんなことはしないと誓われたのは神様であり、その誓いを忘れないために虹を置かれたのも神様です。
人間は忘れます。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言われるように、洪水を経験しても、相変わらず人間は、罪を犯してしまう。
でも、神様の誓いがあるから、生きられる。
神様の恵みによって、生かされている。
これが、聖書の語る福音です。
この福音にこそ、私たちの信仰の土台があります。
改めて、そのことを覚えたいと思います。
・私たちはどう生きるか
ノアの物語には、変われない人間と、それでも諦めず、共に生きようとされる神様の姿が語られています。
今日の前半で、諦めずに烏を飛ばし、鳩をとばし続けたノアの話をしましたけれども、その何倍も神様は、諦めずに、手を伸ばし続けておられます。
水に覆われた世界に鳩を飛ばすように、罪に覆われた世界に愛を注いでおられる。
旧約の時代は、士師を遣わし、預言者を遣わし、そして、御子なるイエス・キリスト遣わし、聖霊を遣わされました。
それによってキリストのからだなる教会がつくられました。
今日は、そのことを記念するペンテコステの日ですけれども、改めて私たちは、諦めずに手を伸ばし続けてくださっている神様のことを、心に覚えたいと思います。
そして、その神様に応えて、生きる者となっていきたいと思います。
神の恵みによって、私たちは、何度でもやり直すことができます。
どんなに失望しても、希望が失われることはありません。
だから祈ることをやめず、信じることを捨てず、小さくても、神様と共に歩み続けたいと思います。
神様のように、私たちも、力を捨て、相手を支配しようとするのでなく、共に生きる道を、諦めずに、求めていきたいと思います。
誰よりも神様が、私たちのことを諦めずに、手を伸ばし続けてくださっている。
その恵みをしっかりと受け止め、私たちも諦めずに、共に生きる道を求めていきましょう。
お祈りします。