聖書をお読みいたします。
聖書箇所は、創世記6章5節〜22節。
新共同訳旧約聖書8ページ〜9ページです。
6:5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、
6:6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。
6:7 主は言われた。「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」
6:8 しかし、ノアは主の好意を得た。
6:9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。
6:10 ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。
6:11 この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
6:12 神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。
6:13 神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。
6:14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。
6:15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、
6:16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。
6:17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。
6:18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。
6:19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。
6:20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。
6:21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい。」
6:22 ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。
「はこぶねをつくろう」と題して、村田悦牧師に、メッセージをしていただきます。
・子どもメッセージ
先週は、カインとアベルという兄弟の話をしました。
今日からは、3週つづけて、ノアさんのお話をしたいと思います。
皆さんは、「ノアの箱舟」って聞いたことありますか。
そのノアさんのお話を今日から読んでいきます。
今日は、その始まりのお話なんですが、紙芝居で、最初の場面を読んでみたいと思います。
1、「ノアの箱舟」
2、神様がおつくりになった世界に、人間がどんどん増えていきました。
神様は、その世界をご覧になって、言われました。
「どうしてあんなに悪いことばかりするのだろう。
嘘をついたり、泥棒をしたり、互いに喧嘩ばかりしている。」
神様は、とっても悲しい気持ちになりました。
そして、とうとう神様は、この世界を、滅ぼすことに決めました。
でも、そんな世界にも、神様を信じて、従う人がいました。
ノアです。
3、神様はノアに言いました。
「これから私は大雨を降らせ、洪水を起こす。
だから、私の指示に従って、大きな船をつくりなさい。
そうすれば、洪水が起こっても、生きることができる。」
「神様、わかりました!」
その日から、ノアの船づくりが始まりました。
「トントン、カンカン、トントン、カンカン。」
その様子を見て、周りの人たちは、言いました。
「ノアは一体何をしてるんだ。
あんな船をつくって、どうするつもりだ。」
でも、ノアは、神様の言うことを聞きながら、大きな船をつくりました。
4、「さあ、船に乗りなさい。もうすぐ大雨を降らせるから。」
ノアとその家族、そして、動物たちは、船に乗り込みました。
みんなが乗ってしまうと、バターンと音がして、船の戸が閉まりました。
今日はここまでなんですが、今日読んだところで、注目したいのは、ノアさんが、箱舟をつくったっていうことです。
この箱舟、ものすごい大きな箱舟で、全長150m、幅25m、高さ15mの3階建ての船だったそうです。
言われてもイメージしにくいと思うので、同じぐらいの船を探してみました。
そしたら、おがさわら丸っていう船が見つかりました。
この船が、全長150m、幅20mで、ほぼ同じぐらいの大きさです。
近くで見ると、こんな感じだそうです。
ノアがつくった船が、どれだけ大きかったかということがわかると思います。
周りの人たちからは、言われたと思います。
「なんでそんなことしてるんだ。
そんな船つくってどうするんだ」って。
その度にノアさんは、説明したと思います。
「もう直ぐ大雨が降って、洪水が起こるから、神様が、箱舟を造るようにって、言われたんだ」って。
でも、誰も信じませんでした。
ノアさんのことを、馬鹿にする人もいたでしょう。
でも、ノアさんは、神様の言うことを信じて、箱舟を造っていきました。
この箱舟が、多くの命を救うことになりました。
人だけじゃなく、動物たちの命も、救っていきました。
このことから今日覚えたいのは、神様を信じて起こす一つ一つの行動が、命を救うことにつながるってことです。
人も、動物も、自然も、どんな命も大切に、共に生きていく。
神様は、そうやって生きていってほしいって言っています。
そんな神様に従って起こす一歩一歩が、命を救うことにつながる。
未来に向かって、命をつないでいくことになるんだってことを、今日は覚えて、どんな人も、どんな生き物も、自然も、大切にできる人になっていきましょう。
お祈りします。
・導入
今日から3週にわたってノアの物語を読んでいきます。
この物語は、大変有名で、ご存知の方も多いと思いますが、改めて読んでみますと、とても示唆に富んだ話だと思います。
単なる神話ではなく、この世界に生きる私たちへの、警告も含んだ、大事なメッセージが、込められています。
そのメッセージに、共に、耳を傾けていきたいと思います。
先ほども言いました通り、今日の箇所は、ノアの物語の始まりの部分です。
そこには、なぜ、ノアが箱舟を造ることになったのか、その経緯が記されています。
・人間の悪
きっかけは、人間の悪でした。
今日の箇所には、悪、堕落、不法という言葉が、繰り返し、記されています。
まず5節「地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っている」。
それから、11節~13節、
6:11 この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
6:12 神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。
6:13 神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。
悪が2回、堕落が3回、不法が2回、くどいぐらいに繰り返し、語られています。
それほど、世界は、人間の悪で満ちていたということです。
その様子をご覧になって、神様は、人を造ったことを後悔し、心を痛められた。
そして、洪水によって、地上からぬぐい去ろうと決意されるわけです。
・神の悲痛
私たちは、東日本大震災以降を生きています。
また、毎年のように、水害によって、命を落とす人がいることを知っています。
そういう私たちにとって、このような聖書の記述というのは、安易には受け入れられない。
神様は、なんて厳しく、また残酷なお方なんだろうと、思ってしまいます。
でも、それほど、深く傷つかれた。
そう決心しなければならないほど、神様は深く痛まれたということです。
このことに、まず、心を向けたいと思います。
天地万物をつくられた時、神様はそれを見て「極めて良い」と言われました。
その極めて良かったはずの世界が、人間たちの悪によって壊されていくのです。
皆さんは、大事にしていたものを壊されたことがあるでしょうか。
我が家ではよく、ゲーム機が壊れます。
今朝も、コントローラーが反応しておりませんでした。
最近のゲーム機は、とても高価でして、治すのにも、結構な費用がかかります。
治すたびに、私は、子どもたちに、今度壊したらもう治さないからね、
大切に使ってねと、いうわけですが、
その日の夜にはもう、居間に転がっています。
そして、すぐにまた、壊れてしまうわけです。
その度にまた、同じことを繰り返すわけですけれども、
そんなことが続きますと、もうキリがないと思ってしまいまして、治す気も起こらなくなってくるわけです。
もちろんこのことと、神様の受けられた傷を、重ねることなんてできませんが、しかし、つながっている部分もあるのではないかと思います。
愛情を注いで、手間ひまかけてつくった、この世界。
特に、人間には、特別な愛情が注がれました。
ご自分の姿に似せて形をつくり、ご自分の息を吹き入れて、生きるものとされました。
そして、その人間に、世界の管理を任せたわけです。
それなのに、人間は、その世界を、壊していった。
つくられた神様の気持ちなんて忘れて、自分たちの好きなように、消費していった。
それによって、神様によって創られた極めて良いと言われる状態が、どんどん崩れていってしまった。
そのことに、神様は、心を痛められたわけです。
何よりも、その破壊行為が、管理を任せた人間の手によって行われていってしまった。
だから、余計に、耐えられなかったのだと思います。
このことを思うとき、今の私たちに対して、神様はどう思っておられるのだろうということを、考えさせられます。
今のこの世界をご覧になって、神様は、どう思っておられるのか。
そのことを、私たちは、思い巡らす必要があるのだと思います。
・警告
天地万物は、つくられた時に、すでにこの世界は、極めて良い状態だった。
人間に任されたのは、その状態を保つこと、管理することだった。
それなのに人間は、その世界を、ほしいままにつくりかえ、壊していってしまった。
それによって神様は、地上から人間をぬぐい去ることを決心されるわけですが、その影響は、人間だけに留まりません。
家畜、這う物、空の鳥、大地のあらゆるものが滅ぼされることになります。
ここには、人間の悪が、被造世界全体を滅ぼすことになるという警告があります。
このような警告は、預言者たちの言葉にもあります。
イザヤ書24:4~5には「地は乾き、衰え/世界は枯れ、衰える。地上の最も高貴な民も弱り果てる。地はそこに住む者のゆえに汚された。」と記されています。
あるいは、先日の祈祷会で読みました、エレミヤ12:4には、「いつまで、この地は乾き/野の青草もすべて枯れたままなのか。そこに住む者らの悪が/鳥や獣を絶やしてしまった。」と記されています。
これは、地球環境の砂漠化のことであり、種の絶滅のことだと言われています。
古代オリエントの時代から、自然環境の破壊は起きていた。
人類はずっと、この世界を破壊し続けてきたということです。
預言者たちは、そのことに警告を発し続けてきました。
それなのに、耳を傾けることもなく、さらに破壊し続けているというのが、現状です。
森林破壊、大気汚染、ゴミ処理問題…、中でも、戦争は、最大の環境破壊です。
神が手を下されるまでもなく、人間は、自らの手で、滅びへと向かっている。
最初に触れました、「堕落」という言葉は、ヘブライ語で「シャーハト」という言葉ですが、その言葉には、「壊す」とか「崩す」とか「破滅する」という意味があるそうです。
つまり、11節は、「この地は神の前に破滅していた」と読むこともできるということです。
神様が滅ぼさなくても、もうすでに世界は滅んでいた。
世界の滅亡は、人間の手によってもたらされたということです。
ここには、現代を生きる私たちに対する警告が、発せられているのだと思います。
・ノアの箱舟づくり
でも、希望がないわけではありません。
ノアの物語は、警告と同時に、命をつなぐ術を教えています。
まず心に留めたいのは、こんな悪に満ちた世界の中でも、ノアは、神様と共に歩んだということです。
どんな環境に置かれても、神様と共に生きることはできるということです。
神様はノアに箱舟を造りなさいと言われました。
先ほど見ましたように、全長150m、幅25m、高さ15m、3階建ての大きな箱舟です。
それを造れと言われた時、ノアはどう思ったでしょうか。
そんなものどうやって造るのか。
造っても、本当に意味があるんだろうか。
考えたに違いありません。
周囲の人たちは、どう思ったでしょうか。
ノアは、神様から、この地もろとも、人間を滅ぼすということを聞いていました。
助かるのは、自分と自分の妻、息子たちとその嫁たちだけだと言われました。
それを聞いて、ノアは、黙ってなんていられなかったと思います。
きっと、そのことを、周りの人たちに伝え、一緒に生き延びようと説得を試みたでしょう。
でも、結果は、どうだったか。
5章の終わりには、ノアに至るまでの系図が、記されています。
そこには、彼の祖父であるメトシェラが、969年生き、そして死んだと書かれています。
計算しますと、このメトシェラの亡くなった年というのは、洪水の年と一致するんです。
ノアが、600歳の時に、洪水が起こったと記されていますので、そこから、計算しますと、メトシェラが亡くなった年と、ちょうど一致するわけです。
これは偶然でしょうか。
ノアの祖父であるメトシェラは、洪水で亡くなったと考えるのが妥当だと思います。
きっと、ノアは、親類や、友人たちにも、説明したでしょう。
でも、誰も聞いてくれなかった。
祖父のメトシェラでさえも、信じてくれなかった。
そういうことがあったんじゃないでしょうか。
それでもノアは、神の言葉を信じて、箱舟をつくっていきました。
自分の内から、外から聞こえてくる、様々な言葉に打ち砕かれながら、神様の言葉に聞き従っていった。
それによって、洪水を経ても、命はつながっていきました。
人類の命だけではありません。
動物も、鳥も、地を這うものたちも、全て命あるものの命が、つながれていきました。
小さな一人の信仰と行動が、命をつないでいったのです。
このことを、今日は、覚えたいと思います。
昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。
その授賞式に、日本から、高校生たちが派遣されました。
彼らは、高校生平和大使として、核兵器廃絶を求めて、2001年から署名活動をしています。
その活動は、被爆地長崎から始まって、今全国各地、全世界へと広がっています。
そんな、彼らのスローガンは、「微力だけど無力じゃない」だそうです。
とても大事な言葉だと思います。
自分たちにできることの小ささを感じながらも、立ち止まるのではなく、「無力じゃない」と言って、一歩踏み出していった。
その姿に、倣うものでありたいと思います。
神様は、今日私たち一人一人に、箱舟をつくりなさい語りかけています。
今の時代に、私たちがつくるべき箱舟とはなんなのか。
私たちがすべきことはなんなのか、それは明確ではありませんが、きっと、神様と共に歩む、小さな一歩一歩が、箱舟となっていくのだと思います。
どんな小さな一歩でも、神様と共に歩むなら、その一歩が、未来につながっていく。
命をつないでいく。
そう信じて、神と共に歩んでいきましょう。
お祈りします。